〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
土曜、日曜と課長の部屋で過ごした。
一緒に買い物に出掛け、少し遠回りをしてドライブをした。
「いくらなんでも今日はアイツ来ないよな」
「口に出すと会ってしまうかも知れないですよ?」
「そうだな。噂は止めよう。…引き寄せてしまったらいけない」
「フフ。会ってしまうなら、課長と康介さんは余程縁があるんですよ」
「…無くていい縁だな」
車から降りてエレベーターに乗った。ドアが閉まる、閉まりかけた。
ガタ。
…。
手が差し込まれた。
「ちょっと待った」
綺麗な長身の男性が入って来た。黒のVネックのセーターの首元が色っぽい。
少し気怠そうな感じが余計色気を増量させていた。
縁はあったようだ。
「…よく会うな、康介」
「そっちがだろ?…お出かけでしたか?小猫ちゃんと」
ズキッとした。
…小猫ちゃんという響きは同時に陽人を思い出す。…わざと?
上昇していく階の数字を眺めながら、狭い空間で息苦しさを感じた。
…動悸が…する。
「どうした?京。顔色が悪いぞ、大丈夫か?」
チン。
「じゃあ、俺はここで」
康介さんが降りた途端、膝から崩れた。
「お、京。大丈夫か」
課長に支えられた。
「大丈夫です。…大丈夫」
「上りだけどエレベーターで貧血にでもなったかな。康介の奴に会ったからかな…」
え。
それはなんでも無いただの言葉だ。
言葉に含みがあるように思えてしまうのは、少しの秘密が私と康介さんにあるからだ。
抱き抱えるようにされ部屋に向かった。
私は課長に身を預けた。