〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
呼び出しは急なモノ

・陽人から



【今から来い】

何よ...。
こんな、目的だけの命令メールなんて。

私の都合は聞いてくれないの?
労いの言葉も付け加えてくれないの?
今からって言われても、そんな直ぐに行ける訳ないじゃん...。

【どこに?】
ふ〜んだ。解ってるけど、聞いてやるんだから。

【部屋】
....。解ってるよ。

【どこの?】
知ってるよ?陽人ん家だって事。

それでも確認メールを送り続けてみた。


(RRRR......)ブーブー。
...やっぱり架かって来たか。


「もし..」
「つべこべ言うな。俺の部屋に決まってる」

「あ、ちょっと...」

プー...。

もー...、取りつく島もないとはこの事ね。
耳から声が洩れそうだったよ。
...痛い。キーンてなるでしょうが...。

ハハハ。...解ってます。解ってますけどね。

残業してたらどうするの?
ねえ、ご飯は食べたの?
作れる食材はまだある?

それとも、これからどこかに連れて行ってくれる気はあるの?

ふぅ。
聞き返すくらいなら、いいからとにかく来いって言われるだろうし。
止めておこう。

終わったら...8時前になるかな。

取り敢えず、行ける時間だけは伝えておこう。

【早くても8時くらいだから。それより早くは無理】
はい、送信。

もう、何も言って来ないでよ...。

ふぅ。


「どうしたの?重苦しい空気が漂ってるよ?」

向かいの同期の高遠麻美が、こっそりチョコを渡してくれながら言う。

「あ、ありがとう。ごめん。...あいつが」

「ああ...はいはい。今すぐ来いメールね...」

「うん。あ!美味し〜い」

いけない。慌てて口を押さえた。
つい心の声が出ちゃった。
残業中だとは言え仕事中なのに。

麻美は声を潜める。

「でしょ?あ、それコンビニ限定のね。発売したばっかりのなの。
ていうか、残業してる場合じゃ無いじゃん、急がないと」

「うん。とにかく早く終わらせて帰んなきゃ」

仕事は、仕事。
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