〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
散らばった洋服をかき集め寝室から出た。
リビングで身につけた。
鞄とコートを手に飛び出した。
チャリンッ。
後ろで鍵が落ちる音がした。
馬鹿、陽人…。
迷った。
階段を下りよう。
ドン。
「あら」
「…ごめんなさい。え?」
さっきの綺麗な人。確か、山下康介…。
「ア、ヤさん?」
「嬉しい〜。聞いてくれたのね、陽人に。…どうしたの?泣いちゃって。
陽人と何かあったのね?もしかして、揉めさせちゃった?」
「あ、いや、私が悪いんです。鈍感でその上…」
「まあ入らない?」
「え?」
「そこ。あたしの部屋だから。ね?
大丈夫よ?性別は男でも心は女、乙女だから。さあ、寒いから、入って入って」
「あ、…でも」
この人、本当に部屋を間違ったのかも。だって丁度真下の階だから。
「陽人には、あたしが連絡しておくから。飛び出したままなんてきっと心配してるわね。
洋服もキチンと直さずに外を歩くのは、治安が良くても、夜は危険よ?
怖くないから、さあ入って」
「では、お、お言葉に甘えて失礼します」
「そう来なくっちゃ。どうぞ。
適当に掛けて。コーヒーでも入れるから。
そうそう、バイト先のお客さんがくれたケーキ、一緒に食べましょ?」
「はい、ありがとうございます」
「敬語は止めましょ?同級生なんでしょ?
京ちゃん」