〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
頼む、深読みはしないでくれ。
京は独りになる。…独りにさせる。
だから、京に、恋愛の楽しさ、切なさ、苦しさ、ときめき、色んな感情、経験をさせてやって欲しいんだ。
善くも悪くも京は俺しか知らない。
俺と居ても、この先目新しい感情は無いだろう…、ドキドキする事も、もう、きっと無いだろう…。
安心は切ないときめきとは無縁だ。
キュンとする場面に沢山出会いたいだろう。
三十代も近付いている。結婚もちらつく。
京が年下に興味を持って、積極的な恋愛でもすればだけど、告白されて受け入れるかは解らない。
この人なら、京をときめかせてくれる。
確かめた訳では無いが、人間性もきっと間違いないだろう。
京をずっと思い続けていた、それだけで信じられる気がする。
三つ年上というのもいい。大人なリードをしてくれるだろう。
俺達は同級生…。
馴れ合い…いい面もあるが、なんだか友達感覚にさせてしまってるんじゃないかって…。
「いいのですか?貴方は、それでいいのですか?」
何を念押しするつもりだ。
「いいも何も。私は私で納得しています」
「そうですか。
さっきの貴方の前置きのような話と言って話した事。
そこに、何がどれ程あるのか、問い返さなくても私なりに充分解ったつもりです。
…解りました。
私は私で。…よしなにという事ですね。
…貴方の望み通りに」
京の事、よろしくお願いしますと、口に出しては決して言えない。
解るか解らないか、その程度で頷いた。
もう、この人と連絡を取る事は無い。
俺は店を後にした。