あやめも知らず
部屋に入るとすぐにベッドに横たわった。
こちらの世界では、私は異物。
安定というものはないと思う。
シンさんだって優しいけれど、いつここを追い出されてもおかしくない。
私を拾ったのは実質あの冷酷王子と呼ばれている少年だ。
初めて会った時は何を言っていたか分からなかったが、まるで指示するように振る舞っていたあの姿が思い浮かぶ。
───この世界のことも知り尽くしているわけではない。
私はイビト。人身売買だとか危ない目に遭うことも可能性はある。
その分、元の世界では私は人権も保障されているし、血のつながりだけはある母親もいるし、自分の力で生きていくことも出来る。