『美味しい』は『可愛い』より正義な件について
ガヤガヤと騒がしい教室の中で、皆が作業に追われている。

私は衣装係に決まったため、お化け役の絵梨が着る予定の真っ白な衣装をチクチクと縫っている最中だ。

皆が役割に分かれて、一つの目的の為に各々動く、文化祭特有のこの時間が私は好きだ。

本番も楽しくて好きだけど、きっと何年後かに思い出として自分の中に色濃く残るのは、こうゆう他愛無い時間の方だと思う。

そう思うとワクワクして、おのずと作業もサクサク進むのだが、仕上げる衣装は何着かあるからまだ先の見えない作業だ。

「絵梨、ちょっとこれ、体に当ててみてくれる?」

ちょっと丈が長すぎたかなあ、少し詰めないと。

「さーちゃん、相変わらず器用だねえ~。私はお裁縫は苦手~」

絵梨がお化けメイクを施したままのんびりと言う。

「私は裁縫と料理しか取り柄がないからね。そのメイク、衣装につけないようにしてね」

私はマチバリを持ちながら絵梨の試着をチェック。

うん、この様子なら当日には余裕で間に合いそう。
< 52 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop