『美味しい』は『可愛い』より正義な件について
「絵梨ちゃんはどんな格好してても可愛いなあ」

瀬良君がガムテープ片手にニコニコしながらやってきた。

彼は大道具兼当日の客引き係だ。

「清君は、ドラキュラの衣装着るんだよね?カッコイイだろうなあ~」

本当、このカップルはいつでもラブラブだ。

「そ!健吾と一緒にね。北見さん、僕のマントってもう出来上がってる?」

「ううん、まだ。客引き係は当日まで衣装いらないから、とりあえず後回し。あ、採寸だけしちゃっていい?」

「もちろん」

瀬良君の背中にメジャーを当てながら、サイズを書き込んでいく。

あとで健吾のサイズも測らなくちゃ。

「マントの色、紫と黒のどっちがいい?」

「そりゃあ僕が紫で健吾が黒でしょ!健吾は“漆黒の王子”だからね」

影でそんな風に呼ばれているなんて、当の本人は知らないけどね。
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