冷たい彼の情愛。
「うわっ!?」
「きゃっ!」
横から肩にどんっと衝撃が走り、私の体も視界も斜めを向いた。
ぎゅっと目をつぶったけど、ひっくり返るかと思っていた体はいつまで経ってもそうなることはなかった。
「大丈夫ですか?」
「え?」
すぐ近くから降ってきた声にはっと目を開けると、触れそうな距離に男の人の顔があった。
その人の表情は天井から照らす蛍光灯の灯りの陰になっていてよく見えないけど、迷惑をかけてしまったんだと私は咄嗟に謝る。
「あ……っ、ごめんなさい!」
「……ううん。俺こそごめんね? 怪我とかしてない?」
「大丈夫、です」
「良かった」
ほっとした声が聞こえてきた時、私は彼に抱き締められていることに気付いた。
「す、すみません……っ、もう大丈夫なので離してください」
「あ、ごめん。うん、無事で良かった」
「っ!」
頭を大きな手でぽんと撫でられ、体をゆっくりと離される。
書庫にいるせいなのか彼の低音の声は私の脳内に甘く響いている気がして、私の心臓をドキドキさせた。