冷たい彼の情愛。
どんな人なんだろう?と何となく興味を持ち彼のことを見上げる。
私との身長差が20センチほどあるようで私の遥か上方に顔があり、私の目線がたどり着いた先には、つい見とれてしまうほどの端整な顔を持っているイケメンがいた。
うわ……カッコいい人……。
そんなことを思いながらじっと見つめてしまっていると、彼ははっと気付いたように私に向けていた目線を下に落とした。
その目線の先には、筋の通った腕につけられた腕時計がある。
「あ、まずい。俺、急いでたんだった。じゃあ、ほんとごめんな?」
「あ、いえ……」
小さな焦りを見せた彼は私ににこっと笑いかけてきた後、ふわりといい香りを漂わせて書庫の入り口の方に行ってしまった。
偶然ぶつかってしまって、1分にも満たないくらいの会話を交わしただけの人。
ただそれだけだったのに、私の記憶に妙に残る出来事で。
「突風みたいな人だったなぁ」と思いながら、私は書庫の散策を続けたのだった。