可愛い弟の為に
その瞬間、桃ちゃんの大きな足音が聞こえたかと思うと、碧の胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。



桃ちゃん、ちょっとマテー!
殴るのかー!!!



「いい加減にしろよ。
この馬鹿議員」

桃ちゃんのいつものテンションではなく、小さな低い声だった。

「奥様が妊娠していらっしゃるから大声では言わない。
『伊藤 春菜』」



…桃ちゃん、何言ってるの?
でもその瞬間、碧の怯えた顔が見えた。



「…何故、その名前を?」

「私には沢山のツテがあるのでね。
色々とご教授してくださる方がいらっしゃるので。
…金で方をつけたな」

「…」

「これ以上、至さんを傷付けるのは許さない。
傷付けたら…どうなるかわかってるよね?」

桃ちゃんはようやく手を離した。

碧の奥さんは青ざめている。

桃ちゃんはお構いなしに宏伯父さんを睨むと僕と伯父さんの間に座った。

「…D商社」

「は?」

伯父さんも顔色が変わった。

「D商社の取引…わかってますよね?」

「…何が言いたい」

「暴露しますよ」

「…」

「されたくなかったら、これ以上、至さんに何も言わないでください。
何かやらかしたら…私は追い込みますからね。
私にとっては貴方の会社など、別にどうなっても良い」

宏伯父さんは立ち上がって武伯父さんの元に行った。



しばらくするとまた元の雰囲気に戻った。
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