可愛い弟の為に
「は じ め ま し て。
い こ ま も も こ で す」

桃子さんの不機嫌さはMAXに達している。

「初めまして。
高石 至と申します」

僕は頭を深く下げる。

顔を上げると少し驚いた様子の桃子さんがいた。



後で聞いた話、こんなに深く頭を下げる成人男性を見た事がなかったらしい。

…普通だろ、挨拶くらい。



更に気まずいのはこの後、両家の両親は退席して、広い和室にポツンと二人、残されてしまった。



…何が若い者同士で話しろ、だ。

アホか、バカか。

10歳も離れていたら共通の話題なんかあるわけないだろ。



無言の時間がただ過ぎる。



「…つく」

桃子さんが何やら呟く。

チラッと見る。

「ムカつく」

はっきりと口が動いたのを見た。

「…本当にムカつく。
どうしてこんなオジサンと見合いしないといけないの」

…ハッキリ言ってくれるなあ。

でも黙っておこう。

「私、この春から大学生なのに、何で結婚なの」

桃子さんは僕がいないように独り言を。

「私には恋愛する権利もないのか。
本当にムカつく。
みんな消えてしまえっ!」

と言って我に返った桃子さんは顔を赤くして下を向いた。



…何だ、可愛いところもあるんだ。
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