可愛い弟の為に
本当の修羅場はこの後だった。



「至さん」

ゲストの方々のお見送りが終わり、桃子さんのお父さんに声を掛けられた。

「桃子の事、頼みます」

まだ泣いている桃子さんは撫子さんに慰められている。
それを遠目に見ながら

「はい。まだ未成年ですし、保護者のつもりで頑張ります。
ただ…もしあまりに慣れないようでしたら一度実家に帰らせる事は出来ますか?」

思わず言ってしまった。
無理に一緒に住んでも可哀想だと思う。

「…それは出来るだけ止めていただきたいのです」

「はい?」

「出戻り、と思われるのは嫌ですから」



僕の心の中で、今、ものすごい突風が吹いたぞ。



そんなに体裁が大事なのか?
自分の子供がどれだけ傷ついているのかわからないのか?
ウチの親も全然わかってないけど、ここの親もダメだわ。


僕のそこにある太い縄がブチッ、と切れた。



服を着替えて夕食に誘われたけど、とても食べられる状態ではない。

「桃子さん、もう今日は疲れたと思います。早く休みましょう」

そう言って僕は自分の感情のまま、桃子さんの手を握り、強引に引っ張った。

「では、本日はお忙しい中ありがとうございました。
また後日、改めでご挨拶に参ります」

両家の両親にそう伝えると、桃子さんを抱きかかえるように引っ張ってホテルのスイートに向かった。
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