可愛い弟の為に
ある意味、透よりもややこしい人物だ。



目の前の桃ちゃんはルームサービスで持って来て貰った夕食をおいしそうに食べている。
お腹が空いているはずなのにガツガツ食べることはない。
少しずつ、口に運んでいる。
こういうのを見るときちんと育てられているんだな、と思う。

婚姻届は今朝、両親の手によって出されている。
もう同じ戸籍に入っているのにこういう発見を今しているのはおかしな話だ。

「…食べないの?」

不満そうに桃ちゃんは手を止める。

「僕はいい、食べたくないんだ」

そう言って窓から見える絶好の夜景を見ていた。



結婚したのに全く実感がない。
明日からちゃんと生活していけるんだろうかと夜景を見ながら不安になっていった。
この子、料理できるのかな、洗濯は…。
聞くに聞けない。
僕も今まで一人暮らしをすることもなく、実家にお世話になっていたので何もできない。

まあ、洗濯は仕事から帰ってきたらしよう。
ご飯は…まあ、適当に買ってきたらいいか。



「ごちそうさまでした」

桃ちゃんの声が聞こえた。

「何考えてたの?」

いちいち、そういうことを聞いてくる。

「色々と」

「Hの事?」

桃ちゃん、自分で言って顔が引きつっていますよ。
きっと、今日一番不安なことだろう。
どうも色々とナメられてるっぽいから一度ここでシメておこうか。

「したいの?」

僕はすばやく立ち上がって桃ちゃんの手を引っ張る。

「イヤッ!」

踏ん張って抵抗するのは目に見えていた。

桃ちゃん、ごめんよ。

僕は後ろから桃ちゃんを抱えてベッドに移動した。

ベッドに桃ちゃんを投げる。

すぐに上から桃ちゃんの両手を押さえた。

もちろん、凶器の足もね。

「…もう、本当に嫌だ」

桃ちゃんの目から涙が流れる。

「…そういう挑発は自分が嫌ならするなよ」

桃ちゃんの耳元に口を近付ける。

低い声を出して囁く。

「僕はそんなに真に受けるタイプじゃないからいいけど、後悔するのは自分だよ」

そのままキスをしてやろうかと思ったがギリギリのラインで口を動かす。

「今日はしないよ。
だってまだ好きかどうかわからない子を抱いても何も楽しくない。
桃ちゃんだって僕の事、知らないでしょ?
何の感情もないのにそういう事をする主義ではないのでね。
頼まれても今日はしない」
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