可愛い弟の為に
僕はその翌年から救急科専門医の資格を得るために他の病院に期限付で行く事になった。

技術を取得して再度紺野総合病院に戻って来い、という院長の父さんの命令で。

自分も当直で夜間救急に入る事が多かったので学んでみたい、という気持ちが強く、すんなりと決めた。

…拓海君の死もその気持ちに上乗せされている。



桃ちゃんも大学で保育士、幼稚園教諭の免許取得の為に乳幼児に関わるバイトやボランティアに精を出していた。

結婚はしているけど、お互いそれなりに忙しく、傍から見ると、完全にスレ違い生活で離婚するんじゃないかと思われているが、当事者同士はそんな事を全く思っていない。



僕は34歳で再度紺野総合病院に戻った。

桃ちゃんは大学卒業をして2年幼稚園教諭を経験し、僕が病院に戻った年に保育園で保育士をする事になった。

もっと小さい赤ちゃんとかのお世話をしたいんだって。

そろそろ自分達の子供も欲しいと言われた。

真剣に考える時期が来たのかもしれない。



また透もこの年、大学を卒業し無事国試もパスして医師になった。

が、こちらに戻らず向こうの大学病院で頑張っている。

大学で素晴らしい小児科医に出会ったらしく、小児科医になる、と。
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