可愛い弟の為に
「これでいい?」
エレベーターの前で透は僕に聞く。
「何が?」
わかっているけど、聞き返す。
「一応、父さんには意思表示をした」
「ま…まあ、そう言われればそうだけど」
そうだけどね。
ちょっと違うと思うよ。
やがてエレベーターが到着し乗り込むとそれぞれの階を押す。
「母さんはどうするの?」
父さんはまあ、透の意思表示があれば何も言わないだろう。
透の狙い通り、孫でも出来れば溺愛するだろうし、未だに続く女遊びも少しは収まるかと思う。
その女遊びの犠牲は母さんでもあり、僕達兄弟でもある。
若い頃からの浮気で母さんは僕と透にしか目が行かなくなった。
子供命で、些細な事でも子供を従わせようとする。
僕は性格的にそれを何とも思わなかったけれど透は違う。
常に反発をしていた。
「…僕の作戦が上手くハマったらハルと一緒に実家に行くよ」
「…それって出来婚でしょ」
その瞬間、透の押した階に着いた。
「じゃあ兄さん、また」
そう言って透はエレベーターを降りた。
あの時の…高3の時の歪みが透をそういう行動に走らせているんだ。
「全く…」
エレベーターが閉まり、僕は天井を見上げて呟く。
多少の成長は言葉の端々や態度で感じられる。
昔よりは両親に対して丸くはなっている。
が…出来婚は止めてくれ。
ハルちゃんが可哀想だ。
透は親や親戚に恥さらしと罵られようが無責任な行動を責められようが、構わない。
ハルちゃんまで同様に見られるのは堪えられないよ。
親はまあ何とか抑えるとしてもあの親戚達にね。
親にはお見合いして一度会っては即日お断り、という行為を繰り返して地道に復讐してるよな。
トドメは…母が蹴散らした彼女が透の子を身籠ったら、きっと透の復讐は完成するのだろうな。
「全く、親も親なら子も子だ。
透ももっと違うやり方を…」
僕は頭を振る。
いや、透は本当にハルちゃんとの間に子供が欲しいと思う。
それは矛盾しているようだが出来婚に持っていこうとしている部分だ。
顔には出さないけど多分、焦っている。
二人とも今年38歳。
子供を作るリミットも近付いている。
ましてや何人か作るとなると…
子育て、大丈夫か?って僕が心配する。
今回こそは邪魔もされたくないし、失敗もしたくない。
…いや、それらは許されない。
色々考えているうちにエレベーターが開いた。
まあ協力出来る事は最大限してやろう。
僕の可愛い弟の為に。
エレベーターの前で透は僕に聞く。
「何が?」
わかっているけど、聞き返す。
「一応、父さんには意思表示をした」
「ま…まあ、そう言われればそうだけど」
そうだけどね。
ちょっと違うと思うよ。
やがてエレベーターが到着し乗り込むとそれぞれの階を押す。
「母さんはどうするの?」
父さんはまあ、透の意思表示があれば何も言わないだろう。
透の狙い通り、孫でも出来れば溺愛するだろうし、未だに続く女遊びも少しは収まるかと思う。
その女遊びの犠牲は母さんでもあり、僕達兄弟でもある。
若い頃からの浮気で母さんは僕と透にしか目が行かなくなった。
子供命で、些細な事でも子供を従わせようとする。
僕は性格的にそれを何とも思わなかったけれど透は違う。
常に反発をしていた。
「…僕の作戦が上手くハマったらハルと一緒に実家に行くよ」
「…それって出来婚でしょ」
その瞬間、透の押した階に着いた。
「じゃあ兄さん、また」
そう言って透はエレベーターを降りた。
あの時の…高3の時の歪みが透をそういう行動に走らせているんだ。
「全く…」
エレベーターが閉まり、僕は天井を見上げて呟く。
多少の成長は言葉の端々や態度で感じられる。
昔よりは両親に対して丸くはなっている。
が…出来婚は止めてくれ。
ハルちゃんが可哀想だ。
透は親や親戚に恥さらしと罵られようが無責任な行動を責められようが、構わない。
ハルちゃんまで同様に見られるのは堪えられないよ。
親はまあ何とか抑えるとしてもあの親戚達にね。
親にはお見合いして一度会っては即日お断り、という行為を繰り返して地道に復讐してるよな。
トドメは…母が蹴散らした彼女が透の子を身籠ったら、きっと透の復讐は完成するのだろうな。
「全く、親も親なら子も子だ。
透ももっと違うやり方を…」
僕は頭を振る。
いや、透は本当にハルちゃんとの間に子供が欲しいと思う。
それは矛盾しているようだが出来婚に持っていこうとしている部分だ。
顔には出さないけど多分、焦っている。
二人とも今年38歳。
子供を作るリミットも近付いている。
ましてや何人か作るとなると…
子育て、大丈夫か?って僕が心配する。
今回こそは邪魔もされたくないし、失敗もしたくない。
…いや、それらは許されない。
色々考えているうちにエレベーターが開いた。
まあ協力出来る事は最大限してやろう。
僕の可愛い弟の為に。