可愛い弟の為に
ヤバイ。

僕は先に頭を下げると透もそれに続いて頭を下げて足早に立ち去ろうとした。

「透」

後ろから声が聞こえる。

僕は心の中であー!っと叫ぶ。
今日くらいはスルーしてくれよ、父さん…

透は隣で異常にイライラしている。
その波長、兄さんに痛いほど、当たっていますよ。

前髪を掻き、振り返る。

「はい、何か?」

あなたの凍てつきそうな声が僕も凍らせてしまいます。

「今度の日曜は休みだな?昼から見合いする段取りにしてある」



アホかー!
いい加減、学習しなさい。



「お断り致します」

透は踵を返して歩き始める。

「いや、駄目だ。いい加減落ち着いて貰わないと」

火に油を注がないでくれ!
透の目がつり上がってる!

「僕は結婚前提でお付き合いしている方がいます。
干渉しないでください」

振り返って言う透の顔は鬼の形相だ。

「ではちゃんと家に連れて来い」

父さん!
声が大きいよ!
周りの医師や看護師、通りすがりの患者や見舞いの者が見ている。
事情を知っている人ならともかく、知らない人にはダメダメ!

また変な噂が流れる。

透は軽く舌打ちをして

「まだそういう段階ではないと僕は思っています。
患者さんが待っていますのでこれで失礼します」

透がもの凄いスピードで立ち去るので僕も透を追う。

その瞬間、チラッと父さんを見たけれど、複雑な顔をしていた。



一度、僕が間に入ってみようかな。
上手くいくと良いが…。
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