48歳のお嬢様
外出はいつも和樹の超安全運転で。
長時間運転するのも苦にならないという。

途中、道の駅で休憩をとって、近隣の温泉地の中の綺麗な老舗ホテルに着いた。


本館は温泉旅館の作りだけれど、
渡り廊下を通った別館最上階のロイヤルスイートは、
和室と洋室の豪華な作りになっていた。

本館へ行く際は専用通路があって、
普通の温泉旅館の様に浴衣で歩き回れるという配慮が堅苦しくなくて良い。


何着か用意された浴衣のうち和樹とお揃いのものに着替えて、
先ずはこちらの自慢だという源泉掛け流しの大浴場へ。


「たまに、こういう非日常的な場所でのんびりするのもいいわよね。
和樹も明日のチェックアウトまで、なぁんにもしなくていいわよ?
ゆっくり浸かっていらっしゃいね」


「では、お時間を合わせましょう。
お嬢様は、何時ごろに上がられますでしょうか?
こちらの休憩スペースでお待ちしております」


「あら、気にしなくてもいいのよ?
自分のペースで上がりたいときに上がって、お部屋に戻るなり中を見て廻るなり、好きにすれば良いわよ」


「そういうわけには参りません。
知らない場所で、不慣れなお嬢様に何かあっては大変でございます」


「もう……過保護なんだから。
じゃあそうね、色々なお湯があるらしいから……一時間半後くらいに、ここに戻るようにするわね。
10分や15分はズレてもいいわよ?
仕事じゃないんだから、ゆっくりしてきてね?
先に上がったときは湯冷めしないように暖かくしていてちょうだい」


「はい、お気遣いありがとうございます、お嬢様」




浴場には、
掛け流しのそれぞれ温度が違う内風呂があり、ジェットバスや電気風呂、人工で炭酸の気泡が出る炭酸泉などいくつも浴槽があった。
岩と緑で囲まれた庭園風の露天風呂はちょうどいい湯加減で、ずっと入っていられそう…。
サウナも、高温、低温、薬湯ミストサウナがあり、岩盤浴も出来るようになっていた。


……たまにこういう所でのんびりするのもいいわよね。
和樹も私のことなんて忘れてゆっくり出来ているかしら……。


少しずつ色々な所を堪能して、上がるとちょうどいい時間になっていた。





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