尽くしたいと思うのは、
朝日が目に突き刺さる。カーテンの隙間から射しこむ光が眩しくて、目を細めた。
今日は水瀬ちゃんと浅田のデートの日。昼前に間ち合わせして映画に行くらしい。
ということを浅田が教えてくれるはずもなく、水瀬ちゃん本人もありえない今。偶然森下ちゃんと小沢ちゃんの話を耳にしただけというなんとも情けない方法で知ったんだ。
さらにせっかく知ることができたというのに、俺はなにもできずただ部屋で悶々としていただけ。一睡もできずに朝がきてしまった。
身を起こしつつも、顔を手で覆う。意味を持たない声が喉からもれた。
『水瀬への気持ち、はっきりさせろよ』
屋上で言われた浅田の言葉が頭をぐるぐると駆け巡る。
あれから何度も自分の気持ちについて考えた。答えを出すのがこわくて、だけど、水瀬ちゃんのことを考えるのはいやじゃなかった。
水瀬ちゃんは出会った時から今の彼女そのままで。新入社員として入ってきたハーフアップの似合う、瞳の大きな可愛い子。構ってみようかと思っているうちに、重いと評される行動を度々見かけた。
コーヒーを淹れたり、ひとつひとつは大したことない雑用。だけど率先してこなす量が圧倒的に多く、いやな顔ひとつ見せない。
そんな様子を仕事以外でも見せているらしく、彼氏の存在が知られるようになった時に発覚した彼女の尽くしぐせ。
いつしか社内では彼女は重たい女の子という印象で落ち着いた。可愛いのに残念な、男運のない子だと。
俺は正直、それを嬉しいと思っていた。
誰も彼女の優しさに、可愛さに、まっすぐな愛情に、気づかなければいいと。俺だけが知っていればいいと思っていたんだ。
だけどいつしか浅田も俺と同じように彼女の魅力に気づいた。