君が好きになるまで、好きでいていいですか?




「…………慧ちゃん、怒ってる?」

途中でタクシーを拾って、慧斗の部屋へ向かう

小さく溜め息をつかれた

「怒ってないよ。ちょっと呆れてるけどね。 お酒弱いくせに飲むから………」


タクシーのなかで慧斗の肩に凭れた万由の額を小突かれた


「ううっ………なんか営業部ばっかりで話を聞いてるしかできなかったからつい………」


「万由は企画部じゃなかったか?なんで営業部と飲み会にしてるんだ?歩美さんは?」


「一週間営業部のヘルプに行かされてて、今日急にお疲れ会だって言われて………」

「それであいつも居たんだ」


あいつ?


「万由に告白してきたイケメン」


ガバッと万由が顔を上げると、慧斗の真っ正面から見た

「ほっ本当は、もう始めに断ってるからっ」


その必死さに思わずクックックと笑われた


「……………慧ちゃん、妬いてる?」


「さぁ、どうだろ」




「…………お邪魔します」

隣に住んでた時は、何度か慧ちゃんの部屋に入った事あるけど、一人暮らしの部屋に来たのは実は初めてだったりして………


「どうぞ、散らかってるけど」


一般的な1LDK の独身者専用マンション

持ち込んだ仕事の図面らしき丸まった束が部屋の隅に立て掛けてあって、分厚い建築関係の本や雑誌が積んであった。



「結構頑張って片付けしたでしょ。だって慧ちゃん本当はもっとズボラなはずだもん」

そう言ってクスクス笑った

「分かってても言うなって、頑張ったんだから…………」



バツが悪そうにそう言いながら、部屋に入るなり後ろから抱き締めてきた

「…………っ」


正直、笑ったのも緊張を隠すため

心臓はタップダンス状態なのに、身体は全然跳ね上がらなくて、ガチガチに固まっている

「けっ……慧ちゃん?」


「クックック……やっぱり万由、酒臭いよ」


「っ!!」
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