君が好きになるまで、好きでいていいですか?
離れようとしてジタバタしても離れない、キュッと捕まったまま、顔だけ後ろに向けると
慧斗の顔が降りてくる
「ダメっ! 歯ブラシ持ってきたからっ」
「へっ?」
咄嗟に自分の口を両手押さえてそう言うと
次の瞬間、顔を歪ませるほど笑われた
「じゃあ、シャワー浴びておいで万由」
「……………うん」
「パジャマ持ってきた?」
クックッと口を押さえながらそうゆう慧斗
「意地悪っ! そうやってすぐ子供扱いするんだからぁ」
確かに、トートバッグ程度の荷物は持って来たけど…………
部屋着用のラフな前開きのワンピース
「………………っ」
「……………慧ちゃん?」
話し声が聞こえて、洗面所から顔を出すと、慧斗がスマホで電話中だった
「だから………行かないよ。町田がいるだろ。俺のことも、よろしく言って置いて……」
また、会社からなのかな………
シャワーから出た万由を見付けて、スマホを切った
「会社から? 大丈夫?」
慧斗が首を振ってスマホをテーブルに置いた
「同僚達が行った居酒屋で施工図をかいて貰ってる会社の人達に会って合流したって。だから、俺も来いって呼ばれただけだよ。大丈夫、行く必要なんかないから」
「せこうず?」
首を傾げると、慧斗がその頭を優しく撫でてくれた
「施工図って言うのはね、職人さんが見る図面の事だよ。だから書いてる人が時々設計してる人との仲介役になってもらったりするから、ストレスが溜まてるって………」
「慧ちゃん達に文句いってるの?」
万由が不安そうな顔をすると、また首を振った
「大丈夫、他の奴がいるし、楽しく飲んでるよ」
笑顔を見せてくれるものの、今まで何度も一緒にいる間、電話がかかって慧斗を取り上げられた慧斗の仕事事情
今日は大丈夫だよね。飲み会で遅れた自分のこと棚に上げてるけど…………
そんな時、やっぱりまた慧斗の携帯のバイブが鳴った