君が好きになるまで、好きでいていいですか?


「……………じゃあ、送ってく」

慧斗がそう言いながら小さく溜め息をついた。

それに対して首を振る

慧ちゃんは優しいから、でもやっぱりこの状態で一緒には帰れない。

「いい、タクシー拾うから」


そのまま鞄をまた持ち直して玄関を出た





絶対私、可愛くなかったよね。

どうして我慢できなかったんだろう。

慧ちゃんの顔も見ずに出てきてしまった。



タクシーを拾うって言っておきながら、トボトボと駅に向かって歩き始めた。

夜、もうすぐ10時になる。こんな時間に一人で帰る事になるなんて………

次に慧ちゃんに会う時、どうしよう



 ぽつんっ


「……………あ、雨?」

そう感じた途端、雨足はだんだん激しくなった

「…………」


何なのっ 信じられないっ!!


忽ち、暗い道筋が雨で見えづらくなった

近くにあった店のつき出した僅かな屋根の下で雨をしのいだ。

急な大雨で服は、結構濡れてしまった。


どうしよう…………慧ちゃんとこに戻ろうかなぁ

「…………」

今は出来ないや、あんな事言っちゃったし

溜め息をつきながら暫くそこで雨をしのぐことにした。

濡れた服は少し冷たく、気温も昼間は暖かかったけど、夜は低く薄着だった万由の身体がだんだん寒く感じてきた。

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