それでも君を愛せて良かった





「アベルーー!
アベルーーー!
いないのか?」



不意に名前を呼ばれ、僕ははっと我に返った。
父さんだ…
父さんが、僕を探してる。



僕は慌てて人形の箱に蓋を戻し、小部屋を出ると、急いで物置きを飛び出した。
父さんは階段の上にいて、そこから僕を見下ろしていた。



「と、父さん、僕ならここだよ。
ごめんよ。ブレスレットがまだみつからないんだ。」

「アベル、すまなかった。
ブレスレットはみつかった。
思い違いをしていたようだ。
作業場にあったのをついさっきみつけたんだよ。」

「そうだったの…」

僕は、ほっとした気持ちで階段を上り、父さんと一緒に作業場に戻った。



(なせだ?なぜ、僕はこんなにどきどきしてるんだ?
僕は何も悪いことはしていない。
ただ、ブレスレットがみつからなかっただけで…
そう…人形のことが気にかかってるんだ。

父さん、あの奥の小部屋におかしな人形があったんだ。
まるで、柩みたいな箱に人間と同じくらいの綺麗な人形が入ってた…
ありのままに、そう話せば良い。
それだけのことじゃないか…)



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