それでも君を愛せて良かった
「本当にすまなかったな。
おまえがあまりに遅いから、サボってるんじゃないかってちょっと怒りに行こうと立ちあがった拍子に、思い出したんだ。
そういえば、あの棚の上に親父が作ったものをいくつか置いてあったって…」

そう言って、父さんははしごのかけられた棚の上を指差した。
そこは、主に余った材料やがらくたが置いてある棚で、普段使うものは置かれていないから、めったに見てみることもなかった。



「なんで、あんなにはっきり地下で見たなんて思ったんだろうなぁ…
今からこんなにボケてたんじゃ、先が思いやられるな。」

父さんはそう言って、照れ臭そうに笑った。



「……あの、さ、父さん…」

「なんだ……?」

「……えっと………」

「どうかしたのか、アベル?」

「あ……おじいちゃんの作ったブレスレットを見せてもらえる?」

「そんなことか。
それなら…ほら、これだ。
見てみな。
すごく繊細な細工だろう?」

なぜそんなことを言ってしまったのか、自分でもわからなかった。
僕はあの人形のことを話すつもりだったのに、なぜ……



結局、僕は夕食の時にも、あの人形のことを話すことはなかった。
話したい気持ちもあったのに、なせだか話せなかったんだ。
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