それでも君を愛せて良かった




「ただいま、ファビエンヌ。
今、帰ったよ!
今日はずっと一人にさせてごめんね。
また夜に来るから…待っててね。」

家に戻った僕はすぐさまファビエンヌの部屋に行って、手短にそれだけ言うと、また部屋にとって返した。



「父さん、今、帰ったよ。」

「アベル、えらく早かったじゃないか。」

「うん…まぁね。
あ、これ、頼まれた材料と、先生からの手紙。
やっぱり体調は特になんともなかったよ。
じゃ、今から、僕、夕食の用意をするからね。」

「ご苦労だったな。
そうか…体調もなんともなかったのなら良かった。
おまえも隣町まで行って疲れてるだろう。
今夜は私が作ろう。」

父さんは、先生からの手紙を読み、満足そうに頷いた。



「そんなに疲れてないから大丈夫だって。
父さんは仕事を続けてよ。
急ぎの仕事なんでしょう?」

「そうか…すまないな。」

僕はそう言うと、作業場を後にした。

夕食の支度を代わってもらえるなら助かるけれど、僕はなんとなく点数稼ぎのようなことをしておきたい気持ちだった。
僕が良い息子であることが、いつかファビエンヌのことを父さんに紹介する時になにか得になるような…
そんな打算が僕の中で働いていた。



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