それでも君を愛せて良かった




「……それで、材料はどういうものを買って来たんだ?」

じゃがいもを口に運びながら、父さんが僕に訊ねた。



「う、うん。
ほら、やっぱり女性物のアクセサリーの注文が多いじゃない。
だから、僕も女性用の指輪でも作ってみようかと思って…
父さんがよく作ってるような石の付いたものをね。」

「でも、石は高いぞ。
あれっぽっちじゃ全く足りなかっただろう?
つけにして来たのか?」

「やだな、父さん。
僕はまだ新米だから、とてもルビーやサファイアなんて使えないよ。
カイヤナイトっていう半輝石を買ったんだ。
ね、父さん、知ってる?とっても綺麗な青い石でね…」

『ファビエンヌの瞳の色に似てるんだ』

言いかけたその言葉を、僕は飲みこんだ。



「そうか、カイヤナイトか…
良いかもしれないな。
だいたいの手順はおまえもすでにわかってるとは思うから、まずは好きなように作ってみなさい。
何かわからないことがあればその都度訊いてくれたら良い。」

「うん、ありがとう、父さん。」

父さんはテイラーさんみたいなことを言って僕をからかうことはなかった。
一緒に暮らしてるから、僕が一日の大半をこの家の中で過ごしていることを父さんは知っている。
そんな僕に恋人がいるなんて、考えてもいないんだろう。



(まさか、同じ家の中に僕の愛する人がいるなんて…そんなこと、気付く筈ないよね…)

僕は、父さんに気付かれないよう小さく微笑んだ。
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