それでも君を愛せて良かった
***



「アベル…すまないけど、なにか手土産になりそうなものを買って来てくれないか?
……そうだな、葡萄酒が良い。
それと、パイが良いな。」

「なんだ、ケイン。
アベルは仕事中だぞ。」

「頼むよ。
何も隣町まで行ってくれって言ってるんじゃないんだ。
そんなものならここの市場にもあるだろう?」

「良いよ、兄さん。
僕、市場に行って来るよ。」

「すまないな、
じゃ、アベル、これ。
余ったら、おまえもなにか好きなものを買って来ると良い。」

アベルは、ケインから金を受け取り、部屋を出て行った。




「ケイン、アベルばかりをこき使うな。
先日もおまえは朝までアベルを起こしてたらしいじゃないか。
それに昨日だって…」

ケインは、父親の前に片手を差し出し、言葉を遮った。



「父さんに話したいことがあったから、あいつを使いに出させたんだ。」

「話?アベルには聞かれたくないことなのか?」

「……まぁね。」

ケインは意味ありげな笑みを浮かべ、煙草に火をつけて白い煙を吐き出した。



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