それでも君を愛せて良かった
「ケイン、アベルがどうしたっていうんだ?
私も仕事があるんだぞ。
つまらないことで煩わせるのはやめてくれ。」

「相変わらず父さんは俺には冷たいんだから。
……ま、そんなことはどうだって良い。
父さん……アベルには女がいることを知ってるかい?」

「アベルに女が?
……ケイン…馬鹿なことを言うな。
あいつはおまえと違い、真面目で晩熟なんだ。
それにあいつに女がいたら、私が気付かない筈がないだろう?」

その言葉に、ケインは大きな声を上げて笑った。



「やっぱり気付いてなかったか。
父さん、俺、あいつと会った時に、なんか雰囲気が変わったって思ったんだ。
大人になった感じがした。
それは年を取ったからじゃないぜ。
でも、父さんの話ではあいつには特に変わったことはないってことだった。
仕事を覚えてきたことがあいつの自信に繋がったんだろうって、父さんは言ったよな。
でも、俺はそうじゃないって思ってたんだ。
きっと、あいつには好きな女がいるって直感的に感じたんだ。」

「そんなことはない。
あいつは、出掛けるといってもせいぜい隣町だ。
しかも、それだって月に一度あるかどうかだ。
あいつはほとんどずっと家にいて、女から手紙が来るようなこともない。
そのあいつにどうやって女が出来るっていうんだ。」
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