上司がキス魔で困ります

 そして唖然としている私を見て、音羽課長は眼を細める。


「返事」
「はっ、はいっ!」


 あっ、返事してしまった!


「よし」


 今度は満足そうにうなずく課長。

 どうやら私は、業務命令で音羽課長の彼女になったらしい……。命令って……。

 いやでもあれだ。これはあくまでも【彼女いる設定により信ぴょう性を持たせるための彼女】であって、本物の彼女じゃないわけで。

 ていうか音羽課長、そんなに切羽詰まってるの?

 課長が本気になれば、私みたいな地味メガネでなくても、普通に百パーセント素敵な彼女ができるだろうに。

 謎だ。ミステリーだ。
 音羽課長という人間が読めない。




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