上司がキス魔で困ります
「じゃあ仕事は切り上げて、帰るか」
「はぁ……」
パソコンの電源を落として(正直仕事どころじゃないわ!)立ち上がると、課長が腕時計に目を落とす。
「腹減ったな……飯食って帰ろう」
「はぁ……って私も一緒にですか?」
「あ、そうか。春川くん、接待だったか」
「いえ、お酒注いでばっかりだったので実際はぺこぺこですけど……」
私が気にしてるのはそういう問題じゃなくて、設定の彼女にしか過ぎない私と食事を取ろうとしている課長が謎なのだけども。
「ぺこぺこ……なるほど。じゃあ行こう。遅くまでやってるうまい飯屋がある」
そんな私の葛藤も御構い無しに、課長はバッグをつかみスタスタと歩き始め、パチパチと電気を消していく。
「わっ、ちょっと待ってくださいよっ!」
実は暗所恐怖症なところがあるので、慌てて音羽課長の背中を追いかけるしかなかった。