上司がキス魔で困ります
危うく泣きそうになる私を見て、蘭ちゃんはなだめるように声を抑える。
「ごめん、めぐちゃん。なにも彼の思いが偽物だって言ってるわけじゃないんだよ。めぐちゃんは可愛いし、賢いし、思いやりがあるし、優しいし、情け深いし、料理も上手だし、掃除も丁寧だし、眼鏡っ子なのに意外に運動神経もいいし、そういうのギャップ萌えだし、」
「ら、蘭ちゃんっ!」
なんだか微妙に脱線する兄をとりあえずいさめると、蘭ちゃんは、
「ああごめん。つい」
と、肩をすくめて苦笑し、言葉を続けた。
「まぁとにかく、彼がめぐちゃんをからかってるとかじゃなくて、温度差があると思うんだ。しかも上司でしょ。別れたら辛いよ。たぶん、めぐちゃんが仕事をやめなくちゃいけなくなると思う」
「……えっ!」
「そういうことまるで考えてなかったって顔だね」
「うん……」
「とにかく、傷が深くなる前に付き合いを考え直したほうがいいと思う。こういうペースで間合いを詰めてくる男は、俺は自分勝手だと思わざるをえないからね」