上司がキス魔で困ります

 今日のことをふんわりメールしたら怒涛の勢いで食いついてきたので、今度全部話すという条件付きで彼女の出勤前にデートメイクを頼んでいた。



「蘭ちゃん、ミノリの家に行ってくるね、行ってきまーす!」


 いそいそと靴を履き、ニャーンと見送りに来たまめさんを撫で、リビングにいる蘭ちゃんに声をかけた。
 ちなみにミノリというのが親友の名前である。


「ああ、ノリちゃんね。よろしく伝えておいて」


 もちろん妹の狭い交友関係など全て把握している蘭ちゃんは、快く送り出してくれた。姿も見られずバッチリだ。

 
 ごめんね、蘭ちゃん。でもさすがに上司とデートって言いづらいよ、やっぱり。ことがことなだけに、心配させるような気がするし……。


 心の中で謝りながら、マンションをあとにした。



 
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