上司がキス魔で困ります

 おしゃれな部屋のど真ん中にローテーブルが置いてあり、その上にも、周囲にも、取り囲むようにものすごい量の化粧品が並べてあった。

 これ何がどう違うんだ。
 私、この十分の一も持ってないよ。


「全部じゃないわよ。はい、ここ座って」


 差し出されたクッションの上に座ると、前髪をピンで止められた。そしてお水のコットンで顔を拭かれた後、美容液たっぷりらしいパックを乗せられる。この間数分の出来事だ。

 さすがプロ、仕事が早い。


「とりあえず五分パックしてる間に髪巻いてあげる」


 肩に届くくらいの髪をどう巻くのかと思ったら、わざとらしくないゆるーい内巻きにしてくれた。

 そしてパックをポイと捨てると、謎の液体をあれこれ使って顔に塗っていく。
 肌触りのいいスポンジやらふわふわしたブラシが顔の上を滑って、なんだか気持ちいいし眠くなってしまう……。



< 56 / 188 >

この作品をシェア

pagetop