上司がキス魔で困ります

「てっ、てっ!?」


 映画鑑賞中に手を繋ぐという行為は、自転車の二人乗り同様、少女漫画の中だけの話だと思っていた私はあからさまに動揺した。


「はい」


 だが堂々とした様子で座席に座り、課長は右手を差し出してくる。


 まじかーまじかー。世間のカップルは寸暇も惜しまずにくっついてるもんなんだなー……。


 こうなっては仕方ない。座席に座り、ドリンクはホルダーに、ポップコーンは膝に乗せて、左手を課長に差し出すと、課長の指がさらっと指の間に入り込んだ。


「あっ、あのっ?」
「なんだ」
「なんだではなくてですね……」



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