役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
3章 遠い記憶と儚い夢
◇◇

役立たず姫。

そんな不名誉なあだ名で呼ばれるようになったのはいつからだったかしら。

ずいぶん長いこと、このあだ名に馴染んでしまってすぐには思い出せないけれど・・・

そうね、母リーザとエリン王妃様が生きていた頃は違ったはず。


あの頃の私はちゃんと王女様だった。


確かに母は身分が低かったけれど、正妃であるエリン様が後ろ盾になってくれていたから、私は沢山の侍女にかしずかれて豪華なドレスに身を包んで生活していた。


自分が大して美人でないことはもう自覚していたけれどね。
だって、エリン様はそれはそれは驚く程の美女だったのだもの。

エリン様を一目でも見てしまえば、自分の容姿が努力や成長じゃどうにもならないことはすぐに理解できた。

時々、侍女達が私の容姿を笑っているのを耳にすることもあったけど、不思議と落ち込むことはなかった。


母のリーザは穏やかで、控えめで、いつだって私に優しかった。

エリン様は美しく、聡明で、時に厳しく私を導いてくれた。
こんなことを言うのは畏れ多いのだけど、私にとってエリン様は父代わりだったように思う。


二人とも心から私を愛し、慈しんでくれた。


本物の父である国王陛下とは・・・
あんまり顔をあわせることは無かった。

子供の頃は寂しく思う日もあったけど、今なら理解できる。

陛下は国と民のために自分の時間の全てを費やしていた。
王とはそういうものなのでしょう。
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