僕 ✕ 私
涼Side______

俺は今機嫌が悪い。

ある人に対してだけ。

崎原恭介先輩。

美雨を泣かせた意味不明な男。

初対面の美雨に突然付き合ってとか言って

戸惑ってるのわかってるくせに心読めるとか

しまいには美雨の気持ち見透かしたような発言して。

人のことそんなにもてあそんで何が楽しいんだよ!!


美雨のことは俺が守る。
絶対もう泣かせない…!!


涼「…美雨…」


教室の隅で友達と笑う美雨。

笑うとエクボができて可愛くなる。

あの笑顔を守らないと。


トントン。


誰かが俺の肩を叩く。

涼「ん?なん……崎原!…先輩。」

恭介「やぁ、さっきぶり。」

涼「…ども」


こいつ、また美雨になにか…!

近づけさせるもんか、もうあんな泣き顔見たくねぇんだ!!


恭介「あ~、大丈夫だよ、今回は君に話があってきたんだ。深瀬涼くん。」

涼「は?俺に?」


思いっきり嫌悪の顔をして睨む。


崎原先輩は頷いて、俺を使われていない倉庫の裏に呼び出した。

どうして残しているのかも不思議なほど、色んな所が錆びて今にも崩れそう。

所々骨組みがむき出しになって、もう何年も使われていないことがわかる。

早く撤去すればいいのに。

そう思いながら、俺は崎原先輩に向き直る。


涼「で。俺に話ってなんすか」

恭介「まぁまぁ。そう怖がらないで。」


怖がってねーよ。
誰がお前なんか怖がるか…!


恭介「君さ…美雨の事好きなの?」

涼「呼び捨てにしないでもらえますか」

恭介「まぁそこはいいじゃん。で?どうなの?」

涼「俺と美雨は幼馴染みって関係です。でも俺  は、一人の異性として美雨が好きです。」

恭介「ふーん…幼馴染みねぇ…。
   その立場を利用して、美雨のことをいい   ように扱って好感度上げてる
   ってわけね。」

涼「何言ってるんですか。
  俺はただ美雨の笑顔が見たくて、
  美雨に笑っていて欲しいから、
  美雨が笑顔でいられるようにしてるだけ
  ですけど。」


あと呼び捨てにすんな…!!!

怒鳴ってやろうとも思ったが、そこはぐっとこらえた。


恭介「綺麗事言うなよ。俺はなぁ、美雨だけを   想ってんだ。テメェみたいに、他の女に   も平気で笑顔振りまきまくってるわけ
   じゃねぇんだよ。」


口調と自称が変わった…怒ったか?

…にしてもこいつ、本当に意味不明だな。

自分のことさえ理解してない。


涼「俺は先輩みたいにあからさまな態度取って
  美雨に気持ちを知られたくないんで。
  それで美雨を傷つけてしまうくらいなら
  俺は影で美雨の幸せを願うだけでいい。」

恭介「なら僕が美雨をもらう。」

涼「ざけんな!お前には絶対渡さねぇ!
  お前なんか、美雨を傷つけるだけだ!
  美雨の気持ちを理解しようともしねぇ奴に
  美雨を任せられるか!!」

恭介「なんだよ、結局取られたくないんじゃん」

涼「っ…俺は…美雨が自然体でいられる奴しか
  認めません」

恭介「…それって、
   美雨が好きになった人を君の意見で判断   するってこと?」

涼「…そんなんじゃないです。
  美雨が好きな人ならそれでいい。
  だけど、美雨が無理してるならそれは、
  好きとは違うと思う。それだけです。」


俺はこみ上げる怒りを必死に抑えながら冷静に話す。

あまりキレたら相手を挑発するだけだ。

そしたら美雨がまた傷つく…。

そんなの、絶対許されない!!!


恭介「まぁ良いかー。綺麗事並べるのは人の
   自由。
   もっとも、君の場合は綺麗事を並べすぎ   て怖いくらいになってるけどねw」

涼「崎原先輩に関係ないです」


俺は崎原先輩に一礼してから足早に倉庫を後にした。


?「涼センパイ!」


俺が階段を上がっていると、1年生らしい子が顔をピンクに染めて話しかけてきた。

……もう察しがつくな。


?「私、1年の湖東 千穂《ことう ちほ》って言
  います…あの!碧海のことで相談が…」

涼「え?あ、うん?」


なんだ、告白とかそっち系じゃないのか。

よかった。

いちいち断るのは気が引けて可哀想になってくる。

自分がイケメンとかは言わないけど、
人よりはモテる方だとは最近自覚した。


千穂「最近、碧海元気ないんです…」

涼「そうか?」

千穂「鹿山センパイといる時は明るいけど、
   クラスでは陰口言われてて、
   本人がそれを気づいてるらしくて…」

涼「うわ、嫌がらせかよ」

千穂「コクリ)だから、どうしたら元気出したもら   えるのか…」

涼「無理に元気出させる必要ないと思うよ」


もしそれを勘付かれたらオワリだからな。


千穂「たしかに…。…やっぱり凄いですね」

涼「なにが?」

千穂「涼センパイ、すっごく頼りになります」

涼「そんなことないよ。俺は…大切な人も守れ  ないような奴だから。」

千穂「涼センパイの彼女さん…羨ましいです」

涼「彼女?だれ?」

千穂「何今更ごまかしてるんですか!もうほと
   んどの人が知ってますよ!桜庭センパイ
   と涼センパイが付き合ってること。」

涼「は?!誰がんなこと?!」

千穂「さぁ…噂の元はわかりませんけど、
   私は廊下で話してる女の子たちが言って
   たのを聞きましたよ?」


まさか…美雨の耳にも…?!
バカ、んなことなったらそれこそ傷つくだろうが!!


千穂「事実…なんですか?」


っ…くそっ、こんな悲しそうな目で見られたら行こうにも行けねぇ…!!

全力否定して去るか…?

いやでも、逆に怪し……ん?

待てよ、怪しまれたらたぶん追求される。

もしかしたら追求した結果で何かがわかるかもしれない!

否定したら確実に信じられて何もされないかもしれないから…よし。


涼「…さぁね、想像に任せるよ。気になるなら
  調べてみな?そゆことも大事だよ。
  もし調べてなにかわかったら俺に言って。」


これでどうだ!!!


千穂「わかりました。絶対付き合ってること、
   証明させてみせますよっ!笑」

涼「おう、がんばれ?笑
  …じゃ、行くわ!!じゃあな!!
  …あ、それと…湖東さん、茅野さんのこと
  頼むな。」

千穂「はい!!」


よし、とりあえずこれで良し。

問題は美雨だ…もしこのことが美雨にバレてたら…!!


涼「……どこだ美雨………」

恭介「美雨ちゃんなら、泣きながら体育館の方
   に走ってったよ?例の噂の件でかなり前
   から悩んでたんだねー。」

涼「…崎原先輩…」


こいつの言うことが完全に信じられるわけじゃないけど…もし本当だとしたら美雨のところへ今すぐ行ってやるべきだ。


涼「今回だけは感謝しときます、
  ありがとうございます」

恭介「嫌味な言い方だな笑」


今はこいつに反論してる暇はない。
美雨が最優先だ…!!!


涼「美雨!!」

人気のない体育館に響き渡る声。

もう、いないのか…?

涼「くそっ…結局俺は大切な人も守れねぇのか
  よっ!」

美雨「りょ…う…?」


舞台裏の方から、ゆっくりとふらついた足取りでおれのなまえをよぶじょしがいた。

泣きじゃくったのか、目は腫れ上がり鼻が詰まって鼻声になっている。
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