影姫にあいを

「まって……。」

そう声をかけたのはほぼ無意識だった。

まだ近くにいた優の服の裾を掴んで言う。

「もう少し居て一緒に居て……ください。
お仕事なのにわがまま言ってごめん。」

そうなのだ。


優と居ると途端に我儘になる。

でも、

「ふふっ。仕事はもういいや。一緒に寝る。」

我儘になるのは優がこうして私を甘やかすからっていうのもある。

「ごめんね。」

「そういうときは謝らない。
ありがとうでいいんだよ。」

「うん……。ありがと。」

柔らかい顔で笑っている優を見ると不安も孤独もすべて流れてしまう。

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