パンプスとスニーカー
 「カフェで奢ってくれたじゃない?」

 「…そんなの微々たるものでしょ」




 ガソリン代やら駐車料金、その他もろもろ。


 それどころか住まいから、生活にいたるまで、親戚でもない赤の他人の武尊におんぶに抱っこだ。


 楽しかった気持ちとはまた別のところで、身の置き所がないような居心地の悪さもある。


 逆に武尊の方が、そんなひまりの四角四面さに面食らっているようで、苦笑していた。



 「そういうこと気にするんだ?」

 「そりゃ、するよ。いつかちゃんとこのご恩は返そうって、いつも思ってるけどね」

 「…恩ねぇ。まあ、たしかに誰にでもするってものでもないかもしれないけどさ。とりあえずデートで、俺、女の子に支払い持ってもらったこととかないからなぁ」

 「え~」

 「って、……前の女のこととか、デリカシーないか」




 困ったように首を傾げている武尊に、ひまりも困ってしまうが…、




 「えっと、その…武尊に前もカノジョがいたのとか、あたしも…知ってるから」




 校内でイチャついてるところなどはさすがに見かけたことはないが、先日ひまりを牽制してきた恵梨香を始め、それなりに顔を知られた武尊の身辺は何かと話題になっていて、女性関係などその最たるものだ。


 そうでなくてもいくつか同じ講義をとっていたこともあるし、武尊の親友の壮太と美紀が幼馴染みだったから、互いに一年生の頃からまるで知らない間柄でもない。




 「武尊ってカッコイイし、女の子の扱いが上手いっていうか…モテるだろうし、いろんな子とお付き合いしてきたんだろうなって、フツーにわかるよ」

 「はは。まあ同じ大学にいて、まったく知らないってこともないか」

 「うん」




 気まずい…というほどではなかったが、なんとなく互いに言葉が切れる。




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