パンプスとスニーカー
 …武尊、気を悪くしたかな?


 わりに大人しそうに見られがちだが、ひまりは案外言いたいことはズバッと言ってしまう性格だった。


 本当のことだからと武尊の女性関係が派手なことを遠まわしに肯定してしまったが、それこそデリカシーがなかっただろうか?


 これまでそれなりに好きな相手もいて、相手も…といい雰囲気になっても、付き合うまで至らなかったのも、ひまりのそうしたところにも一因があったと思う。


 あからさまに勝気さが前面に出ていないから、大人しいと勘違いされて…というのがけっこうあったのだ。


 『意外にキツいんだね』、と言って引いてしまう人間もいた。




 「あのね」

 「あのさ」




 被った。
 「え…あ、ごめん、どうぞ」

 「いや、いいよ。ひまが先に言って?」




 譲られて、どうぞどうぞと、言い合うのも難だろうと口に出してまう。




 「えっとね、もしかして気を悪くした?」

 「え?なんで?」




 キョトンと驚いた顔は、本心のようだ。




 「…そのぉ」




 上手く角が立たない形容詞が思い浮かばず、言葉に詰まってしまう。




 「ああ。スケコマシだって?」

 「ええっ!?」




 その通りだったが、本人にズバリと言い当てられるとそれはそれで困る。




 「ぷっ、そんなに動揺しなくていいよ?」

 「ええ…ああ…う~、そ?」

 「うん、まあ、まんざら誤解ってわけでもないし…」

 「…………」

 「あ、でも、俺、二股とか、同時進行で女の子と付き合ったりとか、遊べない子を相手に遊ぼうとしたり、そこまでえげつないマネしたことないから」




< 244 / 262 >

この作品をシェア

pagetop