パンプスとスニーカー
 「あ…そうだね」




 明日も大学だ。


 中高生のようにどうしてもいかなければ叱咤されるということもないが、わりに真面目な法学生の武尊と、さらに輪をかけて真面目で貧乏性のひまりにしてみれば、明日を心配するのも当然な時間帯。




 「あたしも寝よう」




 その前に少し何か飲むかとキッチンへと踵を返し、武尊の座っているソファのそばを離れかけたところで手首を掴まれる。




 「…ひま」

 「武尊?」




 背が高い武尊に見上げられて、ドキリと胸が跳ねた。


 いつもとはまるで違う視線の高さ。


 …ううん、違う。


 激しく動悸打って、まるで掴まれた手首に心臓が移ってしまったように感じるこのドキドキや、カラカラに口が乾いて舌が張り付いてしまったかのように言葉がでないのは、きっとそんなことが理由じゃなかった。


 武尊の甘く潤んだ瞳や、物言いたげにうっすら開いたカタチのいい唇から視線を外せない。




 「俺の部屋で…一緒に眠らない?」 

 「…………っ!」

 「ダメかな?」




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