奥さんの身柄、確保!
「俺も…帰らなくちゃ…」

 柿田巡査は、ちょっぴり名残惜しそうに頭を掻く。
 私は思わず“待って”と彼を引き留めた。

「……柿田さん、さっきの犯人(ヒト)…前に接客したお客さんだった」

「奥さん…」

「だいぶ前、婦人ハンカチ売り場でオロオロしてて…男の人だから恥ずかしいのかなって…一緒に選んであげたらすごく喜んでくれて…私も嬉しくて……なのに…なのに。グスッ」

「……親切が、仇になる日もありますよ」

 彼は、俯く私の頭をポンポンと優しく叩いた。

「そ、そうですよ…ね」

 無理に笑おうと顔を上げた時。

 私は、彼の右袖に血が滲んでいるのを見つけた。

「柿田さん、大変!怪我してる!」

「え?ああ、大したことないよ。ゴメンね、借りた服汚しちゃって……」
 
「ダメダメっ!化膿したらどうするの、来てきてっ」

「えっ」

 私は再び彼を家の中に引っ張り込んだ。
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