奥さんの身柄、確保!
 テレビのニュースを眺めながら、彼がふと洩らした。
 
「奥さんは…何故今でも1人で?
 失礼ですが、あなただいぶ危なっかしい。
 やはり、ご主人の事を…今でも?」

 蒲団を敷き終わり、リビングに戻った私は、静かに首を振った。

「ううん……私ね、彼のコト殆どなにも知らないの。このお家で過ごしたのも数えるくらい。
 さっきもそう。彼がそんなに凄い刑事さんだったなんて知らなかったし、キズの手当てなんてした事なかった。
 …彼はお仕事で…殆ど家に帰らなかったから。忙しくしてたのね、きっと」

「じゃあ、どうして?一花さ…奥さんならきっと相手に困らない。例えば…」

 彼がキラリと微笑んだ。色っぽく目線を流す。 
 ドキンと鼓動が大きく響く。
 伸ばされた手を危うく取りかけ、慌てて引いた。

「ち、違うんですっ」

 その答えは、私の恥ずかしい秘密に直結するものだ。

 しかし彼は、人懐こい笑顔のままで、躊躇う私になおも尋ねた。

「なぜ?」
「………」

 見透かすような澄んだ瞳。
 
 彼ならば、分かってくれるかもしれない。さっきみたいに私を救って…

 輝く瞳の澄んだ色と、何より彼の頼もしさに、私の心はやがて溶かされた。
< 25 / 30 >

この作品をシェア

pagetop