探偵の彼に追跡されて…
私のアパートのお風呂とは比べ物にならないくらい広いバスルームに驚く。

服を脱ぐと鏡に映る私の胸には小さな赤い痣の様な後が一つあった。

「…っ………」

鶴見君が付けた物だろう。私はそれを消す様に何度も何度も自分の体を洗う。涙と一緒に洗い流す。

お風呂から出るとリビングに入ると所長は電話をしていた。

「悪い明日は行けなくなった。　　そうか、智はランドセル気に入ったか？ 　　良かった。　　ああ子供達にも謝っといてくれ。じゃ、おやすみ。」

所長は電話を切ると私にいつもと変わらない優しい笑顔を向けてくれる。

『ランドセル』『子供達』…所長のお子さんはこの春小学校に入学するのだろう。所長の笑顔に私の胸がチクと傷んだ。

「所長、お風呂有難う御座いました」

俯いて言う私に所長は「どうしたの？」と言って近づき、そして「首元が赤いけど？」と所長は私の顔を覗き込む。

「何でも無いです」

「何でも無い事ないでしょ？」

所長は眉を下げ悲しそうな顔をする。

「消えないんです… 洗っても洗っても…」

止めていた涙がまた溢れてくる。

所長は私が言いたい事が分かったのか、私をギュッと強く抱きしめてくれる。

所長に抱き締められて更に涙が溢れる。

こんな事にならなかったら気づかなかったかもしれない自分の気持ち。でも…伝えることの出来ないこの気持ち。

所長の優しさを勘違いしてしまいそうな自分に

所長には奥さんもお子さんも居るのだから！と、言い聞かせる。

「すいません… もう… 大丈夫です…から…」

私は所長の胸から顔を上げ、所長から離れようとしたが所長はそれを許さないかのように私を抱きしめる腕の力を更に強める。

「所長？」

「俺が大丈夫じゃない… 美野里ちゃんのその胸のキズ俺が消したらダメかな？」

「え？」






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