探偵の彼に追跡されて…
所長の部屋に戻ると寝室に置いてある鞄の前に座り込み鞄に詰め込んで来た数少ない洋服を眺めていると何度も溜息が出る。

はぁ… あぁ気が重いなぁ…

まさかこんな事になるなんて思っても無いから大した服持って来てないし、一度アパートに帰って服持って来た方がいいかな… っていうか私いつ迄ここに居る気なんだろう…

馬鹿だ。

いつ迄もここに居られる訳ないのに奥さんに気付かれないうちに自分の家に帰らないと…

「バイクで行くからGパンのままで良いよ!」

リビングから聞こえてきた所長の声。

「バイクで行くのか?」

車は渉君が使ってるからだけど…

あぁそう言えばバイクの後ろに乗せて貰うの憧れた時期あったな… 確か映画で…




彼が新品のヘルメットを彼女に…

『はい、翔子のヘルメット』

『私の?』

『そうだよ。ヘルメットもバイクの後部席も翔子専用だから!他の男のバイクに乗るなよ!?』

彼にそう言われて女の子はとても嬉しそうに

『うん!ありがとう』と微笑んでバイクに乗ると彼の背中にしがみつき

『健の背中は私だけの物だよ?』

すると彼がヘルメットで彼女のヘルメットにコッツンとぶつけて

『当たり前だ。しっかり捕まってろ!』

ふたりは夕日が映る海岸沿いをバイクで走らせて行く。





あの頃『絶対付き合う人は車よりバイクに乗ってる人が良い』って思ってたっけ…

あれ何て言う映画だっけ…

あっバイクに乗るって事は所長に後ろからしがみつくって事だよね?

奥さんどう思うだろう… やっぱりやだよね? 旦那が知らない女をバイクの後ろに乗せて帰ったら…

「やっぱり辞めたほうがいいよね? うん、辞めよう!」

「じゃー俺も辞めた!」

いつの間にか所長が寝室のドアを開けて立っていた。

「あっ… 」




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