ティアラ
「ふーん」とつぶやきながら、直子は靴を履き替えている。

深町の話題になり、昨日のことを思い出していたあたしは、上靴を持ったままぼんやりしていた。

「どうしたの?」

突っ立っているあたしに、目を向ける直子。

「……ううん」

我に返って明るく笑い返したけれど、胸の中にあるモヤモヤした気持ちはなくならない。

すっきりしない面持ちで、上靴をしまう。

校門を出た後、あたしは悩むことに疲れて、直子に昨日のことを打ち明けた。

面倒くさがられるかもしれないけれど、ひとりで考えていても疲れるだけだったから。

案の定、深町の話題を出すと、直子は一瞬で不機嫌な表情になった。
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