ティアラ
そして、昨日の出来事をすべて話し終わった後、彼女はこう言った。

「よかったじゃない」

満面の笑みを向けられる。

にこやかな笑顔を前にして、あたしは何も言えなくなった。

「彼、謝ってきたんでしょ? じゃあ、もう仕返ししなくて済むじゃない」

さっきとは打って変わった態度で、直子は駅の改札に定期券を入れる。

「……でも、あれは本心で謝ってる顔じゃなかった」

深町が見せたのは、うんざりした顔。

あたしのことを突き放すためにわざと下手に出た、としか思えない。

「本心であろうと、なかろうと、そんなの関係ないじゃない。謝ってきて、土下座までしようとしたんでしょ? 完全にあんたの勝ちだよ、それ」
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