ティアラ
気まずくて、うつむいてしまった。

目を離したら、もう帰られてしまうかもしれないのに。

真っ直ぐ、深町の顔を見ることができなかった。

「ピンクのストラップ、まだ取れてないんだろ?」

突然、返ってきた台詞。

久々に聞く彼の声には、前のような冷たさは入っていない。

すぐに返事ができなかった。

「……俺、腹が減ってんだ。付き合えよ」

変わらない態度。

言葉は素っ気ないものなのに、なぜか嬉しくて。

無視されるんじゃないかって思っていただけに、泣きそうになった。
< 270 / 555 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop