ティアラ
「はぁ? 勝手に変な想像しないでよ」

顔を歪めながら、否定する。

このあたしが失恋なんてするわけないでしょ。

少し声を張り上げたせいで、せき込んでしまった。

「だって、濡れて帰ってきたときのお姉ちゃんの顔、大失恋しましたって感じだったんだもん。

……みんな、心配してるよ。お父さんなんか、見てもない相手にヤキモチまでやいて、泣かせるような男に娘はやらないって言い張ってる」

美空の話を聞き、あたしはハァッとため息をつきながら脱力した。

「いつ、あたしが泣いたのよ!?」

苛立つあたしを見て、美空は「なんだ、違うのか」とつぶやき、部屋を出ていく。
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