ティアラ
「まぁ、妹が少し厄介なだけだと思うよ。人見知りでおとなしい子なの。中学生だから思春期だしね」

「……わかった」

家族の説明を真剣に聞く、篤紀。

そんな話をしている間に、あたしたちは家の前に着いてしまった。

「じゃあ、入るよ?」

玄関のドアノブに手を伸ばしながら、もう一度、自分の身なりを見直す篤紀に、声をかける。

ぎこちなく「あ、あぁ……」とうなずく、彼。

いつも堂々としていて、憎たらしいことばかり言う男がこんなふうに緊張していると、ちょっと面白い。

口元を緩めるあたしは、くすくす笑いながらドアを開けた。
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