窓ぎわ橙の見える席で


受付で会費を支払い終えて、荷物をクロークに預ける。
ビジュー付きのクラッチバッグにお財布などの貴重品を入れて、それ以外は全てクロークに預けておいた。
余計な荷物は少ないに越したことは無い。
てらみなんて料理を思う存分食べるつもりで、チェーン付きのミニバッグを肩から下げている。両手を空けておきたいんだそうな。


ガヤガヤしている会場の一角でてらみと話していたら、見覚えのある3人組の女の子たちに声をかけられた。


「あれ、てらみ?」

「あ!亜希!おー、有衣!わぁ、静香じゃん!」

「ちょー久しぶりー」

「ヤバッ、あんたの脚、綺麗すぎ!」

「元気ー?…………ん?もしかして、つぐみ?」


目立ちまくりのてらみの陰に隠れて、一応私がいたことにも気づいてくれた3人組。
そう、私たちは高校3年の時に同じクラスだった仲間だ。


「つぐみって確か東京にいるんだよね?わざわざ同窓会のためにこっち来たの?」

「あ、ううん。春からこっちに戻ってきてるの」

「そうなんだー!じゃあ今度飲みに行こうよ!」

「うん、誘って」


こういう会話をするたびに、「どうしてこっちに帰ってきたの?」って聞かれないかビクビクする。
罪滅ぼしのため、なんて言えるわけもないし。


同窓会開始の19時になり、一斉に従業員によって料理が運ばれてくる。
てらみの視線がそれらに釘付けになっている間に、今回の同窓会の幹事でもある元生徒会の人たちが壇上に上がって挨拶を始めた。


私たちにはビールやシャンパンやソフトドリンクが配られ、それぞれ好きな飲み物を手に会場に響く挨拶に耳を傾ける。
久しぶりに友達に会っておしゃべりして、既に喉はカラカラ。
この手に持っているシャンパンを一気に喉に流し込みたい衝動を押さえ込むのに必死だった。

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