窓ぎわ橙の見える席で


「…………なによ。言うほど変わってないじゃない」


目の下のクマをちゃんと取り除いて、しっかりご飯を食べてもう少し太って、それから髪の毛もきちんと整えて小綺麗な服を着れば、そんなに悪くないと思うんだけど。
彼はそれを自ら放棄しているような気がしてならない。


そしてゆっくりページを捲って、高校時代の自分を見つけた。


今よりも20センチくらい短いショートボブで、たぶん写真屋さんに変なことでも言われて笑わされたであろう、爆笑している笑顔。
今よりも若々しくて、今よりも純粋で、今よりも毎日を楽しんでいて、今よりももっとずっと輝いてた時期。さらに言っちゃうと、今よりもけっこう太ってた時期。食べ盛りだったから、確か10キロくらいは太ってたはず。


「想像してたよりも綺麗になってたから………………か」


綺麗だなんて、そんな言葉を男の人から言われたことなんて一度も誰からも無かった。


ものすごくダンディな髭の似合うスタイリッシュなおじ様とか、薔薇の花が似合いそうな俗に言うイケメンの男性とか、そういう人が言うならまだしも。
まさかかつての同級生、しかも冴えない変人くんに言われるなんて、ビックリしすぎて固まってしまった。


あれは、きっとまかないご飯をもらえた嬉しさからのお世辞に違いない。
そうじゃないと納得できない。
一瞬でもドキッとしたなんて、誰にも言えない。


だって変人くんだよ?
気のせい、気のせい、と。


でも彼は昔からそんな人だった。
見た目は冴えない部類で、理系の授業には興味を示し、運動神経も大して良くない。
その代わりモゴモゴと言葉を濁すことはせず、思ったことをハッキリ伝える人だった。
興味があるものと無いものに区分し、あるなら積極的に取り組み、無いものには手も触れない。
オタク気質なんだけど、根は明るいし話しやすいから不思議な人だなと思った記憶がある。




思い出したのだ。
さっき彼も言ってたこと。それは嘘ではなかった。


私は高校当時、恋愛感情とかそういうことじゃなく、彼に興味があったということを。









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